静かの夜にぞ白は儚き (ちなこ著) 作品直リンク HOME
ジャンル:近代(大正時代)・恋愛
長さ:中編/完結
紹介文:
新吉原でも屈指の遊郭・香春郭。汀《みぎわ》は、その香春郭にて唯一の太夫である。上得意の客にも媚を売らず、気位高く在るわけでもなく、彼女は仄かに香る花のように微笑んでいるだけ……。そんな汀は、彼女の世話をする綾にとって、大好きな大好きな遊女であった――。
大正時代の花街を舞台にした、遊女の静かな恋を描いた作品。想いと言葉が胸に降り積もり、やがてゆるりと溶けて切なく優しい感動だけを残す。時を忘れて涙したい人に薦めたい、珠玉の恋愛小説。
冒頭文章抜粋: 部屋は薄暗かった。夕刻なのだが、窓は締め切られていた。座敷の隅に置かれていた蝋燭は、とうに尽きていた。空気は心地よく微睡み、優しく肌を滑る。 「先生、もう……?」 女の掠れた声が響いた。気怠げな、しかし澄んだ声音だった。 「ああ、忙しくてね」 素っ気無く答えた男は、黒い紋付羽織を纏う。その立ち姿には、先程までの情事の名残りはなかった。 女は、素肌を布団に埋めている。彼女はうつ伏せで上体を起こし、豊かな黒髪を乱していた。女の小さな顔は白かった。潤んだ大きな瞳は黒目がちで、鼻梁は高く細かった。清楚な儚げな美貌だが、半ば開かれた口唇は妖しいほどに紅い。 |
2003.04.10 現在
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ジャンル:異世界FT
長さ:大河/連載中(不定期)
紹介文:
古き書は語る。滅びの運命(カーズ)を……。
幼い少女アルテリータは雷鳴轟く最中、死にかけた少年兵士と出会った。敵兵と知りながらも絶命のときを看取った彼女に遺された告白。それをアルテリータが口の端に乗せたとき、少女の想いを裏切る奔流が世界を動かした。――混沌の世、十五王国時代に生きる人々を描いた本格派ファンタジー。格調高い文章が魅惑的。
冒頭文章抜粋: 蒼き闇、白き月の夜 世界を混乱が包みし時が来ることを、私はここに、予言しなくてはならない。 大地は血に染まり、空には屍喰鳥(グール)が漂い それが勇気であると信じ無謀となる者、屍を地にさらし それが裏切りと知りながら友を捨てる者、生きて恥辱をさらし 女は夕闇に幽咽の声をもらし、子は親を失い 復讐の刃は絶えることなく、また、大地は血にぬれる。 |
2003.01.31 現在
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社宅の魔女の手作りクッキー (古戸マチコ著) 作品直リンク HOME
ジャンル:現代FT
長さ:短編/完結
紹介文:
社宅に住んでる「私」の耳に今日も聞こえてくるケンカの声。そりゃあもちろん、並木さんちのお婆ちゃんの声だった。また、なんか無茶なことを言ったんだろうなぁ、って思っていたけど……。――孫の誕生日のために魔女が作るクッキーは、一味も二味も違っていたから、さぁ大変。ほのぼのとした雰囲気の中で繰り広げられるドタバタ劇、笑う覚悟を決めてから読むべし読むべし!
冒頭文章抜粋: 土曜日の午後だったので、ちょうどいつものようにお腹をすかせて真っ直ぐ家に帰る途中のことだった。 私は社宅の階段を上ろうとのんびり歩いてたんだけど、上から声が降ってきた。 喧嘩の声だ。喧嘩というか、まだ口論程度のものだろうか。それもまぁいつものようなことなので、私は展開を予想して、べったり壁に張り付いた。少し待って、何もないならこのまま帰る。もし推測どおりになったなら――。 真上の二階の窓が開き、喧嘩の中身が外に漏れた。 「お義母さんっ!!」 |
2002.05.20 現在
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ジャンル:恋愛(現代)
長さ:中編/完結
紹介文:
氷川哉(ひかわさい)が受け取った辞令は、本社へ彼を呼び戻すものだった。穏和で人当たりのよい兄の解雇に伴い、代わって副社長に就いた哉は、本社の経営合理化を推し進めることとなる。そんな彼の元へ、1人の少女がやってきた。少女は、父親の会社を見捨てないでくれと哉に頼むが……。――すれ違う2人にやきもきしながらも読み進めてしまう恋愛小説。とにもかくにも、主人公の哉がカッコイイです。
冒頭文章抜粋: いつものように出社して、いつものようにデスクに就き、いつものようにパソコンを立ち上げる。 机に積まれた、決済のおりた書類を蹴散らして、女子社員が満面の笑みでどうぞ、とコーヒーを置いていく。甘ったるくこびるようなその声に、顔も上げずに応えて、今日のお茶汲み争奪戦は一番若い子が勝ったんだなと、どうでもいいことを考えていると、ぴこ、というまぬけな音の後、画面上に『メールが十二通あります』と表示された。 軽くて使いづらいマウスをどうにか動かして、クリックすると受信画面が現れ、未開封のメールをチェックする。 |
2002.03.20 現在
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