オールデイズロマンチカ (志度勇魚著) 作品直リンク HOME
ジャンル:中世(現代)小説
長さ:短編/連作
紹介文:
時は19世紀、場所はヴィーン。
音楽を介して高らかに謳う人々、その横で“彼ら”が語り合うのは身の回りの些事。激することもなく臆することもなく、訥々と紡がれる心情……。
一風変わった短編をお好みの方にオススメの短編集。まずは第1集「trio」からお試しあれ。
冒頭文章抜粋: 久しぶりに見るマダムOは主婦にお馴染みの白いネットを被っていた。赤銅のような髪の毛がその縁からくるくると円を描いてはみ出す様は母を思い出していつも胸苦しくなるのだが、その時ばかりは別の理由で額を覆ってしまう。 「何を話し合うと言うの? 今すぐパンフレットを変更するか、さもなくば法廷に現れるか二つに一つよ」 この手の女が木で鼻をくくるようなことになったら大変だろうなと思っていた女がそうなってしまった。顔に石の仮面をすっぽり被って、こういう人間を知らないわけではない。集合住宅の一階に暮らす骸骨のような老婆、背中の曲がった狡猾な高利貸し、吝嗇で狭量な寡婦。 ―――――ああ、つまり彼女は三つ目のに当たるわけだ。 |
2003.09.10 現在
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ジャンル:現代もの
長さ:中編/完結
紹介文:
無彩色――周りに溶け込むように合わせて、平穏無事な毎日を刻んで、そうやって相沢雅貴は二十になるまで生きてきた。そんな折、故郷で開かれた同窓会にて、雅貴は過去と遭遇する。付き合っていた彼女。道場裏で殴ってきたあいつ。彼らに背を向け、逃げたのは……。
立ち止まっていた青年が、自分で走り出す様を描いた現代モノの作品。軽すぎない、かといって重すぎない文体で語られる主人公の心情が読者をグイグイ引っ張っていく……これぞ“読ませる”一人称小説。
冒頭文章抜粋: そんなこと言われても、というのが、この時の俺のごくごく率直な感想だった。 他に何を思えというんだろう。こんな言葉を投げかけられた瞬間に。分かる人がいたらぜひ教えてもらいたい。それぐらい、香さんの今の台詞は困った代物だったのだ。 カーテンを通り抜けて射し込んでくる朝日に、俺は目を細めた。香さんの表情を窺おうと思ったけど、逆光になってしまってよく分からない。だから先刻の台詞の意図も、確かめようがなかった。 一人で暮らすにはそう不自由しない感じのワンルームに、二人。テーブルに置かれたままのカクテルバーの空き瓶が、俺の記憶を裏付けした。そうだ、そうなんだ……。 「雅貴、あんたってさぁ、つくづく嫌になるほど好青年だよね」──これが、今日のこの朝を分け合って身なりを整えた途端に、香さんが俺に言った言葉だった。 |
2003.05.10 現在
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ジャンル:異世界FT
長さ:長編/完結
紹介文:
イニス・グレーネは敗れた――世継ぎの姫アマリアは、かくも信じがたい事実と共に、屈辱的な運命を受け入れるようにと命ぜられる。拒む彼女は、婚約者であるクレヴィンの言葉を、ただただ待ちつづけるが……。
壮大な世界観と重厚でいて流麗な文章で綴られた異世界FT。物語の持つ残酷さえも面白味に変えている。ただし、終わり方は好みがわかれるかもしれない。
冒頭文章抜粋: アマリアは野駆けの途中でそれを見つけたのだった。 いくつものまるい丘をさけて川のように流れる街道、その見通しのきかないまがりくねった曲線から飛び出してきたのは、三騎の馬だった。 初夏の陽射しはつよく、濃い緑の上に陽炎がたつほどだった。 アマリアは眼をみはり、身を乗り出して旗をみつめた。 丘の上にいるアマリアの眼下を疾走する騎馬の旗は、翼ある獣とディアルスの剣をあしらったものだった。旗をちぎれそうにはためかせながら、まいあげた埃の中を駆けてゆくかれらは、悪夢に追われているかのように死にもの狂いだ。 |
2004.06.03 現在
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